「守破離」の思想とコーチング学位プログラムの可能性
私は柔道を専門としていますが、その中で特に重視しているのが「守破離」の思想です。ご存知の通り、この思想は、師の教えを守る「守」、既存の枠組みを破り新たな試みを行う「破」、そして自らの道を切り開く「離」の3つの段階から成り立っています。柔道において重要なだけでなく、さまざまな競技や分野における学びや成長の過程にも普遍的に通じるものです。
「守破離」の考え方は、コーチング学位プログラムにおける教育・研究と非常に親和性が高いと感じています。コーチング学の最大の特徴は、現場での経験と理論的な研究が密接に結びついている点です。現場で得た実践的な知見を基盤に、理論的な分析や科学的な裏付けを加えることで、実践と学問の双方に貢献できる学際的な学びを実現します。このプロセスは柔道に限らず、他の競技においても同様に重要な要素であると思います。
例えば、「守」の段階では、どの競技においても基本的な技術や戦術を忠実に習得し、それを現場でどのように活用するかを学びます。「破」の段階では、現場での課題や実際の問題に取り組みながら、新たな指導法やトレーニング方法を模索し、その理論的な根拠を探る過程が不可欠です。そして「離」の段階では、各自が独自の指導哲学や方法論を確立し、現場と学問の両面から新たな価値を創造することが求められます。
コーチング学位プログラムにおいて、「守破離」の思想を基盤に、競技全般に役立つ指導法と研究を進めることで、次世代のアスリートや指導者の育成に貢献できるのではないかと考えています。また、現場で得た知見を研究に還元し、その成果を再び現場で活用するという循環を作り出すことで、広くスポーツ指導全般の発展に寄与すると確信しています。
体育系 教授
増地克之
増地克之